コーセーの80年の歴史を支えてくださった絆 ~「KOSÉ Beauty Partnership」の軌跡~ 2026.03.02
2026年3月2日、コーセーは創業80周年を迎えました。1946年の創業から今日に至るまで、私たちが歩んできた80年の歴史は、常にあらゆるステークホルダーの皆様との「絆」の中にありました。お客さまや流通企業はもちろん、サプライヤー、協業先、地域社会、社員、そして時には競合他社とも「共存共栄」の精神を大切に事業活動に取り組み、共に発展を遂げてきました。
2022年、私たちはこの精神を、あらゆるステークホルダーと互いに高め合う関係と定義し、「KOSÉ Beauty Partnership」として掲げました。これは創業以来の志を現代へとつなぎ、未来に向けて企業が社会で果たすべき意思を示す、私たちの大切な価値観の一つです。
今回、数々の絆がどのように80年の歴史を動かしてきたのか、そしてこれからの未来をどのように彩ろうとしているのかを、象徴的なエピソードとともに紐解いていきます。
創業から続く「共存共栄」の精神 (流通、お客さま)
コーセーの成長の原動力は、創業者・小林孝三郎(以下、孝三郎)が提唱した「製・販・需の共存共栄」にあります。化粧品をつくるメーカー、価値を届ける販売店、そして化粧品を愛用するお客さま。この三者が互いに高め合い、共に持続的な発展を遂げる確かな信頼関係を、私たちは経営の根幹として大切に守り続けてきました。
創業間もない1946年に導入された「協約販売制度」は、商品の品質と販売秩序の維持を目的とした直接取引の仕組みです。この制度は時代とともに発展し、全国の販売店との強固なネットワークを築く礎となりました。孝三郎は取引先との関係を「血の通った取り引き」「ひざを交えた取り引き」と呼び、本音で向き合う一体感を重んじることで、深い信頼関係を築き上げてきました。
私たちに共通する願いは、その先にあるお客さまと社会の豊かさです。化粧品には、世の中を明るく元気にし、人々に夢と希望を与える力があります。多彩な美の選択肢を提供することで、世界中の一人ひとりが生涯にわたり自分だけの輝きを見つけられるよう、長い時間軸で寄り添い、美の力で社会を明るく彩り続けることを目指しています。
その実現のために、私たちは常にお客さまとの直接の対話を大切にしています。その象徴的な取り組みの一つが、2013年から数年にわたり開催した「コーセー Beauty フェスタ」です。グループの主要ブランドを一堂に集め、お客さまが自由に体験できるこの場では、普段はお客さまと接する機会の少ない本社や研究、工場のスタッフが直接対話を行い、生の声を聞くことで製品開発に活かす「学びの場」となりました。こうした「直接の触れ合いから学ぶ」姿勢は、現在の私たちの活動にも深く根付いています。
また、お客様相談室に寄せられるご意見は「お客さまの声を起点とした価値創出」の基盤です。収集された膨大なデータは、顧客体験マネジメント(CXM)プラットフォームを通じて全社で迅速に共有・分析され、商品改良や新価値の創造にダイレクトに反映されています。単なる問い合わせ対応に留まらず、潜在的なニーズを捉えることで、より期待に応える商品提供と応対品質の継続的な強化を実現しています。
業界の枠を超えた「共創」のダイナミズム(協業先、競合他社)

外部パートナーや競合他社との「共創」は、コーセーの発展を支える重要な柱です。その象徴は、1963年のフランス・ロレアル社との提携に遡ります。当時無名だったコーセーが、世界的なロレアル社から製造・販売までを託されたことは業界に衝撃を与えました。「本物の価値を日本に届けたい」という孝三郎の強い信念が生んだこの提携は、その後の製品開発や教育体制の礎となりました。当時社長の小林禮次郎が「日仏ビジネス史の奇跡」と振り返った40年の絆から得た、「競合とも互いの強みを活かし合い、新たな価値を創る」という成功体験は、現在の多角的な共創へと脈々と受け継がれています。
2017年には株式会社ミルボンとの合弁会社を設立し、「iMPREA(インプレア)」を展開しています。これは、コーセーの肌研究とミルボンの毛髪研究を融合させ、美容師を通じて一人ひとりに合わせた美を提案する、美容室ルートでの化粧品販売という新たな試みです。また2019年にはマルホ株式会社と「コーセーマルホファーマ」を設立。医療現場の知見を掛け合わせ、高機能スキンケア「カルテHD」やOTC医薬品を世に送り出すなど、深刻な肌悩みに応える新たな選択肢を切り拓いています。これら強固な連携は、QOL(生活の質)向上や肌悩みの解消といった社会課題の解決にも大きく貢献しています。
さらに2021年からは、花王株式会社とサステナビリティ領域での協働を開始しました。研究所における品質追求・品質管理の過程で、最終的に商品にならなかったメイクアップ化粧品を絵具へとアップサイクルする取り組みや、使用済みプラスチック容器を回収し、再び化粧品容器へと戻す「水平リサイクル」の実証実験など、一社では解決困難な課題に対し、競合の枠を超えて挑んでいます。さらに、環境負荷を低減する物流の効率化や、環境配慮型素材の共同選定など、その歩みは多岐にわたります。ここにあるのは、豊かな地球環境を次世代へ引き継ぐという共通の使命感であり、業界を牽引する両者が手を取り合うことで、消費者の行動変革を促し、持続可能な社会の実現を加速させています。

こうした絆は、当社独自の新規事業創出プログラム「LINK」を通じた新領域の開拓にも広がっています。新生児向けスキンケア『Dear Child Skin』や、食品メーカーとのコラボレーションによる美容プロテイン『Nu⁺Rhythm』など、異業種の知見を取り入れたイノベーションを推進しています。また、2025年の「CES 2025」では、東京エレクトロン デバイス等との共創による「高速プロジェクションマッピングによるMRメイクシミュレーション」を出展しました。これは、コーセーが培ってきた美の感性を最新テクノロジーで具現化した、化粧品の枠を超えた新たな体験価値の追求です。
このように、外部パートナーとの共創は、歴史の転換期において常に新たな挑戦を支える原動力となってきました。ステークホルダーの皆様と互いに高め合い、価値を共創していくこの関係性こそが、私たちの文化として根付く大切な財産です。
価値創造の源泉は「人」にあり(社員)
「KOSÉ Beauty Partnership」を語るうえで、社員もまた、重要なステークホルダーの一員であることは、言うまでもありません。当社の存在理念である「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する」を体現するには、独自の価値を創出し続ける多様な人材の力が必要不可欠であり、社員は価値創造の源泉とも言える重要なパートナーです。その精神は、孝三郎が定めた経営方針に「人材の育成」や「労使の協調」を掲げた当初から一貫して受け継がれています。人材育成理念として『「豊かな人間性と創造性」を発揮できる社員とともに未来を拓く』ことを掲げ、人材育成プログラムを基本としながら、自らキャリアを描き、夢を実現することを支援する体制を整えてきました。
近年では、社員がいきいきと自分らしさを発揮できる環境が企業の推進力に直結するとの考えのもと、ウェルビーイング向上やLGBTQ+の理解促進、女性活躍の支援を強化しています。2019年には、社員の個性が結束することで最高のチカラを発揮し、独自の価値をグローバルに生み出すことを目指し「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)宣言」を策定。グループ全体で多様性を認め合い、高め合う風土づくりを進めています。
こうした個人の発想や情熱を尊重する風土こそが「開発力のコーセー」という評価を支え、ファンデーションの歴史を塗り替える革新的な商品を生み出してきました。1975年には、水を含ませたスポンジで使う夏用ファンデーション「サマード」を発売し、化粧崩れに悩む女性たちに新たな喜びを提供しました。さらに翌1976年には、業界に先駆けて「パウダーファンデーション」を開発。それまでの粉末を固めただけのものとは異なり、油分を配合することで「下地いらずで、パウダーなのに肌にフィットする」という全く新しいカテゴリーを創出し、メイクアップ市場の常識を一変させました。

その後も、美容液という新しいカテゴリーをいち早く世に送り出した「アルファードR・Cリキッド プレシャス」や、一人の研究員の情熱が8年越しの試行錯誤の末に結実した「コスメデコルテ 化粧液(通称:モイスチュア リポソーム)」など、斬新な技術が次々と誕生しました。これらはすべて、社員の知恵と情熱を、会社が信頼して支え続けたパートナーシップの成果にほかなりません。
当社では、人的資本経営の目指すアウトプットとして「魅力ある人材が自ら/互いに磨き合うことで、コーセーグループの未来をつくり出す」ことを定めており、創業期から今にいたるまで、人材の育成を支援する側の会社と、知恵と情熱を発揮する個性ある社員たちとの関係性が価値創造をもたらし、その結果として企業の成長と発展につながってきました。ホールディングス体制となった今、それぞれのブランドや事業が個性を尖らせていくためにも、社員一人ひとりがより一層輝ける組織へと進化し続けていきます。
社会と地球の未来へ、誠実に寄り添う(地域社会、環境、投資家、行政)
創業者・小林孝三郎は、「化粧品には人々の心を幸せにし、世の中を明るくする力がある」という確信のもと、戦後復興への願いを込めて事業を興しました。終戦直後の混乱期、市場では品質の悪い粗悪品が蔓延し、闇市では品質に見合わない高値(ヤミ値)で取り引きされるなど、消費者が安心して化粧品を手に取れる状況ではありませんでした。そのような中、コーセーが貫いた高品質な自社生産と、価値に見合った価格による安定供給へのこだわりは、混乱する社会に対する誠実な姿勢の現れであり、信頼を何より重んじる現在の企業姿勢の原点となりました。
その後も、事業を通じて地域社会や販売店との絆を深め、生活の豊かさを提供し続ける中で、私たちは「コーセーが社会においてどのような存在であるべきか」という問いに向き合いました。その答えを明確に示した歴史的転換点が、1991年のCI(コーポレート・アイデンティティ)導入です。社名を「株式会社小林コーセー」から「株式会社コーセー」へと変更し、シンボルマークも刷新。存在理念として「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する」を掲げ、企業メッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」を含む新たな企業理念体系を定めました。これにより、希薄だったイメージを一新し、社会に対して明確に示すと同時に、社員一人ひとりの自社に対する理解を深め、さらなる誇りと原動力へとつなげました。
さらに、1999年の株式公開、2000年の東証一部(当時)上場は、経営の透明性を高め、開かれた企業として社会の信頼を築くための決断でした。投資家の皆様との良好なパートナーシップは、持続的な成長を支える源泉となり、次なる価値創造への大きな力となっています。
CIで定められた企業メッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」は、現在のサステナビリティ活動の礎です。2009年に始まった雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトは、沖縄県のサンゴ礁の保全から始まり、現在は長野県Hakuba Valleyの雪を守る取り組みや海外での環境活動にも裾野を広げ、青い地球を守る大きな波となりました。また、社会が困難に直面したとき、私たちは常に「化粧品の力」を信じて行動してきました。阪神・淡路大震災や東日本大震災の際、避難所へあの手この手で化粧品を届けたのは、販売店やお客さまとの強い絆があったからです。コロナ禍においても、医療従事者を応援する「You are my HERO」プロジェクトを通じ、116万個以上の化粧品を届けました。
2020年に公開した「コーセー サステナビリティ プラン(2024年にサステナビリティ戦略へ発展)」では、社会・環境領域の重要課題(マテリアリティ)に対し、「人に寄り添う」「地球に寄り添う」6つのコミットメントを策定。社会や地球環境そのものをステークホルダーと捉え、持続可能な未来に向けた取り組みを推進しています。「社会や地球環境があってこそ事業が成立する」という感謝のもと、私たちはこれからも、自らの活動が及ぼす影響を真摯に評価し、誠実な企業経営を続けていきます。

コーセーの国内生産工場として3拠点目となる南アルプス工場は、山梨県や南アルプス市との強固な連携によって、2026年2月27日に竣工を迎えました。化粧品製造において「水」は重要な原料であり、豊かな水を守り育み、活用する山梨県の取り組みに共感し、「山梨県の豊かな水資源の活用による持続可能な社会構築に係る基本合意書」を2024年に締結。県産の「グリーン水素」をはじめとした環境に配慮したエネルギーの活用と地産地消に取り組んでいます。また、企業版ふるさと納税の寄附を介して、山梨県の『「名水の地」ブランド化推進事業』における、水資源に関する魅力ついての発信を支援しています。生産工場の建設をきっかけとした、地域社会や行政との共生・共創も、「美しい知恵 人へ、地球へ。」という私たちの理念の想いを実現するための大きな柱です。
これからのKOSÉ Beauty Partnership ~ビューティコンソーシアムの実現~
コーセーの80年にわたる歴史は、常に「パートナーシップ」と共にありました。あらゆるステークホルダーと互いに高め合う関係があったからこそ、私たちは独自の価値を創造し、未知の領域を切り拓き、社会の課題に向き合い続けることができたのです。
現代は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる、将来の予測が困難な変化の激しい時代です。こうした中で「美」の定義は、単なる外見の装いから、心の充足や健康、自己表現、さらには環境への配慮までを含む、多角的で深みのある「多層化」へと進化を続けています。私たちは、これまでの絆をさらに深化させ、新たなつながりを模索することで、多様化する一人ひとりの生涯に寄り添うパートナーであり続けたいと考えています。
そのために私たちが目指す将来像は、多彩な事業が形態を超えて連携し、幅広い価値を提供する「ビューティコンソーシアム」の実現です。これは「美」を軸として異分野の知を結集し、新たな価値創造と領域の拡張を目指す構想です。化粧品は、外見を整えるだけでなく、心に寄り添い、人生を明るく彩る力を持っています。だからこそ、私たちが挑戦すべき領域は、ウェルビーイングや医薬品分野など、無限の可能性を秘めています。
当社は2014年の米タルト社の買収以降、2024年のタイ・ピューリ社のM&A、2025年のインド・フォックステイル社との戦略的提携など、グローバルにおいてもこの価値領域の拡大を加速させてきました。これらは単なる規模の拡大ではなく、異なる文化や知見を持つパートナーと「美」を軸に共鳴し、提供する価値を多様にし、広げていくことに本質があります。この「脱・自前」の考え方によるオープンな共創こそが、次世代のコーセーを牽引する力となります。
これまで支えてくださった、そしてこれから出会うすべてのステークホルダーの皆様とともに、「KOSÉ Beauty Partnership」という揺るぎない価値観のもと、私たちは「美の力」で、人々の人生と社会をどこまでも明るく彩り続けていきます。