化粧品メーカーでは珍しい自社での化粧品容器と輸送箱の製造 ~容器・資材に込められたモノづくりへの想い~ 2026.09.28
私たちが毎日手にする化粧品。その美しい容器を手に取る瞬間の高揚感は、大きな魅力の一つです。 コーセーグループには、モノづくりにおいて、プラスチック容器と輸送箱という資材の設計・製造を内製で行う部門があります。それが、生産を担う子会社「コーセーインダストリーズ株式会社」に属する「マテリアル事業室」です。
このように、プラスチック成型による化粧品容器や輸送箱をグループ内で設計・製造する化粧品会社は多くありません。コーセーグループのモノづくりは、多くの協力会社の皆さまによる資材供給に支えられていますが、マテリアル事業室においても容器や輸送箱の設計・製造を担うことで、より変化するニーズに迅速かつ柔軟に対応できる体制が整えられています。
今回は、マテリアル事業室、生産グループ長の尾崎伸彦と、技術係の小林佑基に話を聞きました。マテリアル事業室の歩みとモノづくりのストーリーを紐解きます。
写真右から
コーセーインダストリーズ株式会社 マテリアル事業室 生産グループ長
尾崎 伸彦(おざき のぶひこ)
2002年に株式会社トパックへキャリア入社し、コーセーやアルビオンへの紙器関連の営業を担当。 2003年の株式会社トパックとインターコスメ株式会社の合併によりインターコスメ社員となり、2016年のコーセーインダストリーズ株式会社設立を経て、2022年より群馬工場のマテリアル事業室へ異動。現在は生産グループ長として、容器、キャップ、輸送箱の製造の統括・管理などを担当。
同 マテリアル事業室 管理グループ 技術係 小林 佑基(こばやし ゆうき)
2011年にインターコスメ株式会社へキャリア入社。 成形機のオペレーターを担当。 2024年より技術係に就任。現在は、商品デザイン部が求める製品を成形技術で忠実に具現化するため、設計から試作、製造現場の品質調整までを担当。
化粧品のプラスチック容器と輸送箱を自社で一貫して生産
―マテリアル事業室とはどのような部門なのでしょうか。
尾崎 マテリアル事業室は、容器・包装資材の面からコーセーグループのモノづくりを支える部門です。主な役割は、化粧品容器を製造するプラスチック事業と、化粧品輸送箱を製造する製函事業を通じて、安定供給を支えることにあります。品質・コスト・納期、いわゆるQCD(Quality・Cost・Delivery)の向上に取り組むとともに、容器のデザインなどを担う商品デザイン部と密に連携し、各ブランドや商品の魅力を引き立てる容器資材を提案・製造しています。また、バイオマス樹脂やリサイクル樹脂の活用にも積極的に取り組み、環境に配慮した包装資材の開発を進めています。
小林 プラスチック事業では、ボトル、ネジキャップ、中蓋など、化粧品に用いられるプラスチック成形品を一貫して製造しています。たとえば「コスメデコルテ ルースパウダー」では、容器本体(下部ボトル)、キャップ、中蓋というパッケージを構成する3つの主要資材すべてを自社で生産しています。複数の部材を一貫して手がけられることは、マテリアル事業室の大きな特長です。

コーセーにおけるマテリアル事業の歩み
―マテリアル事業室はどのような経緯で発足したのでしょうか。
尾崎 もともとは、同じグループの別会社として独立していました。その歴史は1961年にさかのぼります。これまで、化粧品容器を製造するプラスチック事業、化粧品輸送箱を製造する製函事業、化粧品の仕上げやバルク製造を行う化粧品事業の3事業を中心に展開してきました。小ロット・多品種にきめ細かく対応する力と、スピード感のあるモノづくりを強みに、長年にわたりコーセーグループの生産活動を支えてきました。
1961年:東京都北区豊島にて、化粧品輸送箱の製造専門会社として「株式会社東箱」が設立。
1971年: コーセー狭山工場内へ移転。
1991年: コーセー群馬工場内に、化粧品容器製造会社として「ビューティーパック株式会社」を設立。
1993年: 株式会社東箱が「株式会社トパック」へ社名変更。
1997年: ビューティーパック株式会社が「インターコスメ株式会社」へ社名変更。
2003年: トパックとインターコスメが合併。化粧品容器、化粧品輸送箱、化粧品の仕上げ・バルク製造をワンストップで担う体制へ事業領域を拡大。
2017年: インターコスメが「コーセーインダストリーズ株式会社」と合併。現在のマテリアル事業室として、プラスチック事業と製函事業に特化した体制へ移行。

このようにマテリアル事業室は、長年にわたりコーセーグループのモノづくりを支えてきました。培ってきた技術と対応力を生かしながら、時代や市場の変化に合わせて進化を続けています。
環境への配慮と意匠性の両立
―商品を製造する中でのこだわりを教えてください。
小林 私たちは、素材の選定から試作、成形、組み立てに至るまで、求められる品質を追求しています。
特に印象に残っているものが、「雪肌精 BLUE バウンス バランシング オイル」のネジキャップ開発です。植物由来のハトムギもみ殻を活用した、環境配慮型プラスチックネジキャップの生産に取り組みました。ハトムギ由来の材料を調達する際には、主要材料取引先さまのご協力に加え、ハトムギを使用する他社からも材料をご提供いただきました。社外のパートナーとも連携することで、商品化につなげることができました。
技術面では、天然素材であるハトムギもみ殻の粒径や、樹脂との配合比率を細かく調整する必要がありました。
また、ハトムギの殻に含まれる繊維は射出成形機の内部に残りやすく、次の製造品目へ切り替える際には、通常よりも入念な清掃が必要になります。品質を維持しながら生産性も確保できるよう、現場で試行錯誤を重ねました。このネジキャップは、2つのプラスチックパーツを組み合わせて完成させる構造です。使用中に部品が外れることのないよう、設計や接着剤の塗布位置についても細かな調整を行いました。一方で、外部メーカーとの競争を通じてコスト改善や品質向上を図るとともに、難易度の高い製品では他の 化粧品容器メーカーさまと協力することもあります。自社の技術に外部パートナーの強みを掛け合わせ、完成度の高い製品を届けられることも、マテリアル事業室の強みです。

―『雪肌精 BLUE』のパッケージデザインは、世界的なデザイン賞の一つである「Red Dot Award」のプロダクトデザイン部門で、最高位の「Best of the Best」を受賞しています。こうした高い意匠性を形にするうえでも、マテリアル事業室の技術が生かされているのですね。
現場の声から特許を生み出す開発力
―製函事業のこだわりも教えてください。
尾崎 製函事業では、コーセーで使用される化粧品輸送箱の大半を手がけています。
代表的な取り組みの一つが、2014年に取得した、輸送箱をより簡単かつスマートに開封できる「ロック解除機能」に関する特許です。開発のきっかけは、店頭でお客さまと接するビューティコンサルタントの方々から寄せられた声でした。「工場から届く輸送箱を開ける際、マニキュアが剥がれたり、指先を傷つけたりすることがある」。こうした現場の声を受け、商品デザイン部と連携して開発を進めました。箱の指定箇所を押し込むだけで開封できる独自の紙器構造を設計し、爪を傷つけにくく、スムーズに開けられる仕様を形にしました。販売現場と生産現場が一体となって実現した、現場起点の改善事例です。

また、輸送箱の設計提案も自社で行っています。商品の特性や物流条件に応じた設計により、製品品質の保持、物流効率の向上、コストの最適化につなげています。環境面では、2018年から古紙を100%原料とする輸送箱を実現しました。新規パルプの使用を抑えながら、環境に配慮した輸送箱を提供しています。マテリアル事業室は、容器と輸送箱の両面から、コーセーの商品づくりを支えています。
ディテールを再現するためのこだわり
―今まで携わったものの中で、思い入れのある商品を教えてください。
小林 思い入れのある商品はいくつかありますが、ここでは2つ紹介します。
1つ目は、2007年発売の「ジルバイ ジルスチュアート オードトワレ」です。ネジキャップや、ガラス容器に取り付けられた装飾パーツなどを担当しました。
『ジルスチュアート』は細部までこだわり抜かれたデザインが特長で、形状・品質ともに非常に高い完成度が求められます。そのため、十分な試作期間を設けながら開発を進めました。マテリアル事業室の加飾技術によって商品化へとつながり、その技術が現在にも受け継がれていることに、大きな思い入れがあります。
2つ目は、2024年発売の「コスメデコルテ ルースパウダー」です。マテリアル事業室では、容器本体(下部ボトル)、キャップ、中蓋の3資材を生産しました。

開発では、キャップを閉めた際に容器との間に生じる隙間が均一で美しく見えるよう、微細な調整を重ねました。また、パウダーの漏れを防ぎながらも、使用時に中蓋が簡単に外れすぎないようにするなど、細かな品質要件にも対応しました。何度も試作と測定を繰り返し、使いやすさと美しさを両立させた商品です。
コーセーのモノづくりをこれからも支える
―最後に、将来への想いを教えてください。
尾崎 今後の目標は、生産できる品目をさらに広げ、コーセーグループ全体のモノづくりに、より深く貢献し、お客さまへ感動していただける商品をお届けしていくことです。対応可能な製品の幅を広げることで、グループ内での供給体制を強化し、必要な資材を安定して供給できるようにしていきます。また、容器の付加価値を高める加飾技術にも注力していきます。たとえば、表面に金属のような光沢を与える蒸着、精緻な文字や柄を表現するホットスタンプ、各種シルク印刷などです。こうした工程への対応力を広げ、技術を磨き続けることで、品質と納期の両面において、コーセーグループからさらに信頼される存在を目指します。さらに、外部からの資材供給に不測の事態が生じた際には、必要に応じて供給を補完し、コーセーの供給責任を支えられる存在でありたいと考えています。これからも、確かな技術と安定した供給力を通じて、コーセーグループの未来のモノづくりを支え、お客さまの毎日の美しさと豊かさに貢献していきます。