市場の拡大を牽引した、コーセーの「メイクキープミスト」 ~誕生の裏側と、新たな化粧習慣定着への挑戦~ 2026.06.01

朝の完璧な仕上がりを、一日中キープしたい――。そんな多くの人が抱える「化粧崩れ」という普遍的な悩みに応えるアイテムがあります。累計出荷本数2,300万本※1を突破し、メイクアップフィクサー市場で約7割※2のシェアを獲得し、多くのお客さまから支持をいただいているコーセーの「メイク キープ ミスト」です。今回は、2019年の発売以来大ヒットを記録している「メイク キープ ミスト」の誕生の裏側と、「メイクの仕上げにミストを吹きかける」という新たな化粧習慣の定着を目指す挑戦について、企画の立ち上げを担当した直井 孝之と、現担当の石関 友香、谷津 祥美に話を聞きました。
※1  「メイク キープ ミスト」・「メイク キープ ミスト EX」・「メイク キープ ミスト EX +」の国内累計出荷実績(2019年6月16日~2026年4月30日)、当社調べ  ※2 インテージSRI+ メイクアップフィクサー市場 メイクキープミストシリーズ 金額シェア(2025年1月~2026年4月)

写真左から
㈱コーセー コンシューマーブランド事業部 グループマネージャー 直井 孝之(なおい たかゆき)
千葉県出身。2000年コーセーに入社。ドラッグストア等の営業を担当し、その後コンシューマーブランドや戦略ブランドで商品企画や販売企画を担当。2026年より現職。
同 コンシューマーブランド事業部 企画室 メイク課 商品企画 石関 友香(いしぜき ゆか)
茨城県出身。2010年コーセーに入社。ドラッグストア等の営業を担当した後、コンシューマーブランド事業部にて雪肌精の商品企画に携わる。その後、PR業務を経て、2023年より再び商品企画へ異動し、現在に至る。
同 コンシューマーブランド事業部 企画室 メイク課 販売企画 谷津 祥美(やつ よしみ)
栃木県出身。2016年コーセーに入社。ドラッグストアやGMS等の営業を担当し、2019年から現部署でメイクブランドの販売企画に従事。2024年に育休から復職後、現ブランドの販売企画業務を担う

猛暑を背景とした潜在ニーズと、ゼロからの商品企画

――2019年6月に発売された初代「メイク キープ ミスト」ですが、当時はどのような背景から企画がスタートしたのでしょうか?

直井 企画を考え始めた2018年当時は、猛暑日の記録が次々と更新され、40度を超えるような非常に過酷な夏でした。この厳しい環境下で、メイクをする方々の間で「化粧崩れ」に対する悩みが普遍的かつ切実なものとなっていました。当時の市場にも、化粧崩れを防ぐアイテムは存在していましたが、その多くは化粧下地やフェイスパウダーといったベースメイクの段階で対処するものが主流です。メイクの仕上げに吹きかけるミスト状のアイテムが一部のブランドから出始めたタイミングで、市場規模としてはまだ小さい状況でした。

――そのような市場環境の中で、コーセーとしてはどのように開発に着手されたのでしょうか?

直井 コーセーにおいても、これまでこの「メイクアップフィクサー」というカテゴリーの商品を出したことはありませんでした。それでも、これまでにない圧倒的なメイクキープ力をもつ商品をつくることができれば、メイクユーザーの「メイクを崩したくない!」というニーズに応えられると考え、白紙の状態から商品開発に挑戦したのです。既存の枠にとらわれず、ゼロベースで純粋にお客さまの求める機能を商品化できたことが、結果的にメイクアップフィクサーという市場そのものを大きく拡大させることに繋がったのだと考えています。

決裁の壁を打ち破った「実験動画」と「パッケージデザイン」

――今までにない商品を形にするには、多くの苦労があったのではないでしょうか?

直井 社内の決裁は容易には進まず、非常に難航しました。まず、「この商品は本当に売れるのか」「発売する必要があるのか」という厳しい指摘を受け、承認されるまでに幾度となく企画を練り直しました。また、「圧倒的な機能性」には自信を持っていたのですが、「それが本当に圧倒的な機能なのかどうか、言葉だけではわからない」という壁にもぶつかりました。企画書でどれだけその価値を説明してもなかなか理解を得られず、苦心する日々が続きました。

――言葉だけでは伝わらないというその状況を、どのように打破したのでしょうか?

直井 この「メイクをキープする力」を明確に伝える方法を考え抜いて、行き着いた答えが「視覚に訴えかけること」でした。そこで商品開発と研究所の協力を得て、肌に見立てた「人工皮革」を用いた実験ツールを準備しました。そして、人工皮革にミストを吹きかけた面に水滴がパラパラと弾かれる「撥水効果」がひと目で分かる実験動画を、自分たちで手作りしたのです。通常、社内の決裁の場で実験を実演することはないのですが、この手作りのツールを持ち込んで実演した瞬間、ようやく社内の空気が「これなら絶対にいける」という確信へと変わりました。視覚的に機能を伝えるために作成したこれらの動画やツールは、その後、営業現場や販売店の皆さまへの説明においても、商品の特長をわかりやすく伝える手段として活用されました。社内決裁のために作成した動画が、最終的にはお客さまに機能の確かさを実感していただくためのツールとなり、それが大ヒットにつながった要因の一つだったと考えています。

――どのブランドから発売するかについても議論があったそうですね。

直井 既存のメイクアップブランドのラインナップの一部として出す方が、売り場も確保されており、確実だという意見がありました。しかし今回は、コーセーとしても新しいカテゴリーの商品だったため、「まずはより多くの方に手に取っていただくべきだ」と考えました。だからこそ、お求めやすい価格帯で発売し、より多くの店舗で展開できるよう、ブランドに帰属させずに単独アイテムとして勝負するべきだという結論に至りました。今となっては、あの決断が現在の結果に結びついていると感じています。

――商品のネーミングやパッケージデザインには、どのようなこだわりがありましたか?

直井 商品の機能が圧倒的かつ明確であったため、奇をてらわずにシンプルで分かりやすく伝えることを第一に考えました。実は「メイク キープ ミスト」という名称は、一般名称に近すぎるため商標登録が取れないというリスクがありました。他社から同じような名前の商品が出る可能性も承知の上で、日本の生活者に「メイクをキープするミストですよ」とストレートに伝えることを最優先したのです。パッケージデザインも、化粧崩れが起きるシーンを分かりやすくアイコン化し、確かな効果を力強く表すために「ピンクのボトルと黒の文字」という強いコントラストを採用しました。店頭に並んだときに一目で目を引くこのデザインは、今では「ピンクのボトル=メイク キープ」とお客さまに認知されるほどのブランドの象徴として定着しました。

――品質面での開発の苦労はどのようなものでしたか?

直井 本品はフィックスミストとしては珍しく、水と油の2層構造になっています。これはメイクをキープするための成分として従来の水系成分だけでなく、汗により強くなるように油系成分も配合する技術的なチャレンジでした。しかし、これをミスト状にしてスプレーで均一に噴霧させることは技術的な壁がありました。時間が経つとノズルが詰まってしまうのではないか、肌に均一に乗らないのではないかという懸念を払拭するため、何度も研究所に足を運び、過酷な温度条件下で1ヶ月置いた後の噴霧状態をテストするなど、細心の注意を払って品質の検証を重ねたのです。この時に確立された水と油の絶妙なバランスや配合技術は特許によって守られており、最大の強みとして生かされています。妥協を許さない品質へのこだわりが、圧倒的な機能性を支える土台になっています。

圧倒的なシェアを支える、キープ力と使用感の両立

――ここからは、現在の企画担当である谷津さんと石関さんにお話を伺います。発売して約7年経過した現在でも、圧倒的な市場シェアを獲得し続けている強みは何でしょうか?

谷津 一言で言えば、「圧倒的なメイクキープ力」と「使用感の良さ」の両立にあります。一般的に、メイクを固めてキープする力が強いと、肌がパリッと張ったり、乾燥を感じたりする不快感が伴いがちです。しかしメイク キープ ミストは、そうした負担感がなく、驚くほど心地よく使える点が、多くのお客さまから圧倒的に支持されている理由だと考えています。

――初代の発売から現在に至るまで、商品自体も進化を続けていると伺いました。

谷津 はい。初代のヒットに甘んじることなく、常にお客さまの声を聞いて進化を続けている点も大きな理由の一つです。コロナ禍によるマスク生活が日常となった環境変化に合わせて2代目を開発し、現在の3代目では既存の素材の限界を超えるため、自社オリジナルの「スーパーメイクコート成分※3」を新開発して配合しました。これにより、メイクのヨレを防ぐ力やウォータープルーフ効果が飛躍的に高まり、高温多湿の環境下にも対応。“24時間崩れない”キープ力を発揮するまでに進化を遂げました。
※3 (ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸)クロスポリマー

左から、初代・2代目・現在の3代目

――今後のプロモーション展開については、どのようにお考えですか?

谷津 今年はターゲット層の認知やインサイトに合わせたプロモーションを展開していきます。まず1つ目のターゲットは、美容への関心が高く「メイク キープ ミスト」は知っているものの、まだ購入に至っていない層です。その理由の多くは「本当に効果があるのか」を具体的にイメージしにくいことや、「使用方法が難しいのではないか」と思われていることにあります。そのため、圧倒的な機能性や正しい使い方を視覚的にアピールし、購入へのハードルを取り除くことを狙いプロモーションをしていきます。そして2つ目のターゲットは、まだ商品を知らないより幅広いお客さまです。こうした層に向けては、マス広告やブランドアンバサダーの力を借りて、あらゆる媒体を組み合わせた大々的なキャンペーンを展開します。まずは「メイク キープ ミスト」という商品をしっかりと知っていただき、さらなる認知拡大を狙っていきます。

ミストのポテンシャルを最大限に引き出す「専用パフ」

――2026年7月16日に『メイクキープミスト用パフ』を限定発売されると聞きました。

石関 私たちが行ったインサイト調査で、メイク キープ ミスト購入者の約4人に1人が、「ミストをメイクスポンジに吹きかけて使用している」ことが分かりました。SNSや動画プラットフォームでも、インフルエンサーたちが「より崩れにくくなる裏技」としてこの使用法を発信し、大きな話題を呼びました。そこで、ミストのポテンシャルをさらに引き出すために、ミストとの相性を徹底的に研究し、効果を最大化する専用パフの開発に至りました。

――パフにはどのような特徴があるのでしょうか?

石関 目が非常に細かい特殊素材を採用し、液を吸い込みすぎず表面に保持できるのが特徴です。使い方はパフに直接ミストを吹きかけ、やさしくなじませるだけ。やわらかく指圧がかかりにくい設計で、摩擦やヨレを防ぎながら、より化粧崩れを実感しやすい小鼻や、目元の小じわなどの細かい部分にも均一に密着します。メイク キープ ミストは直接スプレーするだけでも十分効果はありますが、より隙間のない化粧膜を形成できることは検証でも実証されています。お客さまの声を起点としたこのパフで、ミストのポテンシャルを最大限に引き出し、これまで以上の仕上がりとキープの満足感をお届けできればと考えています。

「1人1本」の習慣化を目指して

――最後に、この商品を通じて、お客さまにどのような思いを届けていきたいですか?

直井 発売当初、これほどまでに市場を牽引し、海外を含めグローバルで支持されるシリーズに成長するとは想像もしていませんでした。現在では7割のシェアを持つ中で、その責任と期待を担うアイテムに成長したことを、誇りに感じています。これからも、皆さまの期待を超えられる挑戦を続けていきます。

谷津 私たちの最終的な目標は、メイクをするすべての方に「1人1本」、まるでスキンケアで化粧水を使うのと同じような感覚で、メイクの仕上げにミストを使うことを習慣化していただくことです。私自身も毎日愛用していますが、これがないと不安になる「お守り」のような存在になっています。まだ使ったことがない方にも、一度使えばその良さが必ず分かっていただけるはずですので、ぜひ皆さまも、毎日のメイクの仕上げにミストを吹きかけることを習慣化していただけたら嬉しいです。

石関 私自身も顔汗や深刻な化粧崩れに悩んでいた一人です。昔は崩れない下地やファンデーションを何層も重ねて、結果的に厚塗りになって余計に崩れやすくなるという負の連鎖に陥っていた時期もありました。しかし、この商品に出会って「吹きかけるだけで、自分の好きなメイクの仕上がりを変えずにキープできる」という事実に衝撃を受けたことを今でも覚えています。これからもお客さまに、この感動と驚きを届けられる商品を企画していきたいと思います。

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